はじめに
FIRE(Financial Independence, Retire Early)を目指し、ついにその目処が立った私が退職を決意してから最終出勤日を迎えるまでの記録です。これから同じ道を目指す方や退職を考えている方にとって、何かの参考になれば幸いです。
退職の決意
退職を意識しはじめたのは、FIREの目標額達成が見えてきた約1年半前のことです。私はそのタイミングでまず、退職を正式に申し出る前に上司に相談し、近い将来の退職の可能性をほのめかしました。突然の退職宣言では、私の立場上、職場に混乱を招く可能性があると考えたからです。また、退職に向けて必要な手続きや準備がスムーズに進むよう、早めの相談が必要だと判断しました。
理由については「プライベートな事情」と伝えましたが。しかし普段の私の仕事の様子をよく理解してくれている上司は、「仕事の負担が大きいのではないか」という思いを巡らせてくれたようで、それまでよりも作業環境改善のための要望に耳を傾けてくれるようになりました。そのため、それ以降の期間、私は心身の負荷を少しでも軽減しようと、現状の問題点を上司とともに改善しようと試みました。結果的に大きな変化は得られませんでしたが、今後の後輩達のための一助となるよう問題提起を行えたことは意義があったと思います。

いよいよ本格的な退職準備へ
その後、約1年が経過して退職の意志が固まり、折を見て上司に正式に申し出ることを決意しました。自分の気持ちの確認の意味も込めて、まずは退職願を書くことから始めました。私は手書きが苦手で、字も綺麗とは言えないため、納得のいくものを書くのに何度も書き直しました。完成した退職願を封筒に入れ、曲がらないようクリアファイルに挟み、鞄にしまいました。いよいよその日が来たのだと、気持ちが高ぶりました。
いざ上司に退職願を手渡す日、私は機会を伺いながらもなかなか行動に移せませんでした。足を止めては頭の中でシミュレーションを繰り返しました。実際に上司に退職の決意を伝え、手渡す瞬間を想像すると、どう切り出すべきか、引き留められた場合はどう言って納得してもらおうかといった考えが頭を巡り、不安と緊張が押し寄せます。それでも、遂に意を決して上司のもとへ向かいました。

「辞める?」
上司と二人だけになれるタイミングを見計らい、話を切り出しました。「お話があるのですが、少しお時間いただいてもよろしいでしょうか?」
すると、その瞬間上司から「辞める?」と一言問いかけられました。この問いかけは、以前に一度相談していたことと、普段の私の様子から察してくれたからだと思います。まるで私の気持ちをすべて理解しているかのような一言でした。その言葉を聞いた瞬間、胸がじんと熱くなり、改めて退職を決意した自分の覚悟を実感しました。この瞬間は、今でも鮮明に覚えています。驚きと安堵、そして「伝えなければ」という使命感が混じり合い、私の心を駆け巡りました。
私は「はい」と答え、机の引き出しから退職願を取り出して手渡しました。退職の理由や、これまで相談に乗っていただいたことへの感謝の気持ちを簡潔に伝えると、上司は退職願を受け取り、私の意志を静かに受け止めてくれました。「わかったよ」という言葉は、これまで私を支えてくれた上司らしい、温かみのあるものでした。その後は軽い雑談を交えつつ5分ほど会話をし、緊張から解放された私は、すっきりとした気持ちでその場を後にしました。しかしその日はいつも通りのルーチンを忘れていたりするなど、今振り返れば一日中動揺を引きずっていたように思います。
最終出勤日に向けて
退職の意思を伝えたて10日あまり、繁忙期が終わると「これで本当に一区切りついた」という開放感がありました。引き継ぎを含め、最後の仕事に取り組みました。繁忙期は過ぎたとはいえ、それなりに忙しい日々でしたが心は軽く、穏やかな気分で仕事に向き合えました。また、最終出勤日が近づくにつれ、「これで本当に終わるのだろうか」という不思議な感覚が強まりました。特に最終出勤日の一週間前の朝目覚めたときには、「来週の朝にはもうアラームは必要ないんだな」と思いながら、一週間後のアラーム設定を解除したのを覚えています。
一方で、退職について両親への報告も行いました。初めは驚きつつも「おまえの人生はおまえが決断すればいい」と応援してくれました。また、両親も私が毎日遅くまで仕事をしていた事を知っていたため、「ゆっくり休みなよ」とねぎらいの言葉をもらえました。母親などは、「時間ができたら旅行に連れて行って」と嬉しそうに話していました。これまでにも何度も旅行に行生きたいと話を持ちかけられていました。その度にまた今度連れて行ってあげるからと話を濁していたのですが、一度「あんたなんか全然そんな暇なんかないじゃない」と悲しそうに言われたことがありました。本当に楽しみにしているのだと思います。
最終出勤日
最終出勤日当日は早めに出勤し、デスクの整理を行いました。積み重ねてきた資料やファイルを一つ一つ確認しながら、「これで本当に終わるのだな」としみじみと感じました。
遅めの昼食を終えた後には、社内の挨拶回りを行いました。懐かしい顔ぶれとの会話を楽しみました。別れを惜しんだり、職場の将来について熱く語ったり、くだらない冗談を言ったり、思い出話に花を咲かせたり、自分がこの職場で過ごした時間の重みを改めて感じました。最後に部署内での最後の挨拶を済ませました。一人一人に感謝を伝え、これからも頑張ってほしいという気持ちを伝えて職場を後にしました。
帰り道は晴れやかな気持ちで、これからの自由な生活を思い描いていました。いつもの帰り道の風景が、少し違って見えるような気がしました。この先、またここを通ることがあったときには、どのような景色に見えるのだろう。帰宅後、普段は節約して選んでいた第3のビールではなく、生ビールを一杯。これまでの努力と、これからの新しい一歩に乾杯しました。
最後に
退職という大きな決断は、簡単なものではありませんでした。多くの葛藤や緊張がありましたが、自分の人生を見つめ直す良い機会でもありました。これから新たな挑戦が始まりますが、この経験を糧に、自分らしく歩んでいきたいと思います。